学短信 -Nr.1- (2003.11.13)

ドナウ川対岸から臨むレーゲンスブルク(撮影:糸井さん)

 ロータリー奨学生としてドイツ文学を勉強すべく渡独してから、はや2ヶ月半。一 日ごとに、夜が明けるのは遅く、日が暮れるのは早くなってゆきますが、空気の冷た さも日暮れどきの街並もどこか秋田の晩秋を思わせて、外国にいながら「なつかし い」と感じることもしばしばです。
 ここ、レーゲンスブルクはドナウ川沿いにある古い街です。二本の尖塔を持つ大聖 堂を中心に広がる旧市街では、どこへ続くとも知れぬ石畳の細い路地が迷路のように 入り組んでいます。中世、ドナウを介して商業の街として栄えたレーゲンスブルク。 商人たちは、ドナウを下りながら、イタリア、ロシア、そして黒海までも船を出して いたと言います。かつては、裕福な商人たちが、自分の富を誇るかのように競って高 い塔を持つ館を構え、それこそ「百塔の街」といってもよい眺めだったとか。やがて レーゲンスブルクも表舞台から退き、維持が大変な「塔を持つ館」は消えていったの ですが、街を歩いていると、あちこちにその名残りを見つけることができます。
 そして、ドナウ。12世紀に建設されたという石橋の上から旧市街を臨むと、大聖 堂が水面に映り、遠くには国境を越えてゆく船が停泊しているのが見えます。この流 れの先にパッサウが、ウィーンが、ブダペストがあり、やがて黒海に注ぐ。
 様々な国の人々が交差した歴史を持つゆえか、独特の空気のある街です。古く、静 かでありながら、外から来る者に対して開放的で、活気もある。もうひとつ。レーゲ ンスブルクでは「住民の数だけ店がある」と言われるほど居酒屋が多く、夜ともなる と店々には灯りがともり、暖かい季節ならば屋外にテーブルや椅子が並べられ、それ こそ老いも若きも、ビールなど飲みつつゆっくりと話をする人たちで溢れかえります。大学の留学生向けオリエンテーションでも、「大学おすすめ居酒屋」なるリストがしっかり配布されました。いわく、「この街では誰でも必ず、自分のお気に入りの居酒屋を見つけることができる」。願わくば、一年の滞在中のうちに、そんな居酒屋にめぐり会えますように。


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