学短信 -Nr.3- (2003.11.30)

クリスマス・マルクトにて(夕暮れ、メリーゴーランド前)(撮影:糸井さん)

11月某日
 スーパーにて買い物。お釣りの中にオーストリアのユーロコインが混じっている。 ユーロの紙幣は加盟12ヶ国すべて同じ図柄なのだが、コインの裏側は国によって違 うのだ。例えば、オーストリアの1ユーロコインはモーツァルト。
 ある日、お釣りの中に偶然スペインのコインを見つけて以来、気がついたときに財 布の中を調べるのが習慣になった。今まで手にしたのは、オーストリア、オランダ、 フランスなど、やはり国境を接している国のものが多い。他にイタリアやスペインも よく見かけるけれども、これは旅行に行く人が多いためか。海の向こうのアイルラン ド、国境をいくつか越えねばならないギリシャ、フィンランドなどのコインには、未 だ出会えず。
 熱心に切手収集などする小学生のようだと思っていたら、同じ講義に出ているフラ ンス人の男の子も「お釣りをもらう度に必ず調べる」と言っていた。ちなみに、各国 のユーロコインは使わずに「へそくり」として取ってある。

11月某日
 クリスマス用のクランツ作りの手伝い。「クランツ」はいわゆるクリスマス・リー ス。様々な種類の常緑樹の葉っぱを束ねて輪っかにして作る。外にて木々の枝から ちょうどよい大きさに葉っぱを切り取る係、部屋の中で束ねる係と分かれるが、とて も手先が器用とはいえない自分は屋外作業担当。猫が一匹、足元にまとわりつきなが らつきあってくれるが、やはり寒いらしく、建物の中へ行き、またこちらへ戻り、と いうのを繰り返している。出来上がったクランツからは深い森の匂いがする。これが ドイツのクリスマスの匂いか。
 昼食はソーセージの入ったじゃがいものスープにプレッツェル。外は霧。部屋の中 では暖炉が燃えている。

11月某日
 元は商人の館であったという古いホールにて、中世のレーゲンスブルクについての シンポジウム。時間前についたというのに既に会場は満員。大学の同じゼミの人を見 つけて挨拶。そのあと、奨学金の関係でお世話になっている人に声をかけられて握 手。さらにもうひとりやって来て立ち話。見知らぬ街で、だんだんと顔なじみが出来 てゆくのは不思議な感じだ。結局、人は人によって、その土地に結ばれてゆくのだろ うと思う。

11月某日
 クリスマス・マルクト始まる。
 クリスマス・マルクトというと何といってもニュルンベルクが有名だけれども、こ の時期、ドイツではいろんな街で市が立っている。ここレーゲンスブルクも然り。何 週間も前から準備が進められてきた広場に灯りがともる。屋台の傍らに設置された移 動式のメリーゴーランドも、音楽を流しながら回り始めた。


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