学短信 -Nr.4- (2003.12.8)

街に残る塔(撮影:糸井さん)

12月某日
 ドイツ語・日本語の勉強会の日。先週東京へ行ったときのお土産だといって彼が鞄 から取り出したのは「5種類の味が楽しめる」とコピーがついた「お好みあられ」 だった。渋く、かつ的を射た選択。彼のお父さんも、このあられが大好物らしく、家 族のためにいつも袋いっぱい買い込んでくると言う。
 夕方、帰宅するとポストに友人からの郵便物。開けてみると、今度は生みそタイプ の「ど〜んと6食みそ汁」セット。他に文庫本など。自分でも気づいていなかったよ うな「今、ほしいもの」をほんとによくわかっていて、驚くやら、嬉しいやら。持つ べきものは友。

12月某日
 夜、コンサートへ。会場へ向かう前に、クリスマス・マルクトにてグリュー・ワイ ンとソーセージを挟んだパンとで腹ごしらえする。ちょうど夕食時ということもあっ てか、やはり食べ物の屋台が賑わっている。各種ソーセージの他、クレープ、レープ クーヘン、レーゲンスブルク名物のお菓子ダンプフ・ヌーデル、焼き栗、じゃがいも スープ等。まだまだあるのだが、人出の多さになかなか全部は周りきれず。よい匂い と、ざわめきと、夜の中に浮かぶ灯り。クリスマス・マルクトは、まだまだ続く。

12月某日
 誰かと話す機会があったときに必ず聞かれる質問のひとつが「日本のどこから来た のか」というもの。今のところ、「秋田」と答えて、いったい何処なのか知っていた ドイツ人は一人だけである(フランクフルトに住む、大の日本びいきの方だった)。 その度に、日本の北のほうにあって、こんなところで、と説明するのだが、こちらの 発音が悪いらしく、皆「アチタ?」と聞き返してくる。頑張って訂正しているけれど も、もし、いつかドイツで「アチタ」と聞くことがあったら、それはレーゲンスブル ク発だと思ってほしい。

12月某日
 旧市街の広場を駅のほうへ向かって歩いている途中、通りがかりの人に何か尋ねら れる。渡独3ヶ月、ドイツ語にもだいぶ慣れたと思っていたが、質問の内容がまった く理解できず。ドイツ語であることは間違いないと思うのだが、何の単語かもわから ない。やっぱりまだまだか、と少し落ち込みながら、世話をしてくださっているロー タリーの方にその話をすると「それはきっと、方言がきつい人だったのだろう」と笑 う。この時期、週末ともなると、クリスマス・マルクトを見るべく、近郊の小さな町 や村の人びとが大勢やって来るらしいのだが、ここから10キロ離れると、もう言葉 は全然違うのだという。ドイツ語習得の先に、さらにバイリッシュ(バイエルン地方 の方言)の壁があるのか。道は険しい。



もどる