学短信 -Nr.14 (2004.4.12)


イースターのプレゼント(撮影:糸井さん)

4月某日
 駅前の通りに「Kulturhauptstadt 2010」の幟が立つ。EUは、毎年加盟国の中か ら一都市、ときには数都市を「ヨーロッパ文化首都」として選ぶのだが、2010年の候 補地にレーゲンスブルクも入っているのだ。
 この「ヨーロッパ文化首都」は、1985年に当時のギリシアの文化大臣であった メリナ・メルクーリが、ヨーロッパ統合のためには相互の文化の理解が必要であると 提唱したところから始まったらしい。「文化首都」として選ばれた都市では、その一 年間を通し、芸術文化に関する様々なイベントが催されることになる。今年2004 年、文化首都と定められたのは、フランスのリールとイタリアのジェノヴァの二都 市。来年2005年はアイルランドのコークだという。
 2010年の文化首都を目指して立候補しているドイツの都市は、現在のところ以 下のとおり。アウグスブルク、バンベルク、ブラウンシュヴァイク、ブレーメン、 エッセン/ルール地帯、ゲルリッツ、ハレ、カールスルーエ、カッセル、ケルン、 リューベック、ミュンスター、オスナブリュック、ポツダム、レーゲンスブルク、 ヴィッテンベルク/デッサウ。この中から、さらに各州一都市に候補地が絞り込ま れ、最終的な投票が行われることとなる。
 各都市ごとに「いかに自分の街が文化首都にふさわしいか」というコンセプトを打 ち出しているのだが、「文化を通してのヨーロッパ統合」が基本理念であるためか、 他地域とのつながりを強調するところが多い。例えば、ハンザ都市リューベックは、 バルト海を介したスカンジナビアやバルト三国、ロシア、ポーランドとの経済的、文 化的関係の深さを、ポーランドとの国境沿いの街ゲルリッツは、キエフからスペイン 北部のサンティアゴ・デ・コンポステーラへと向かう巡礼の道をつなぐ中継点であっ たことを主張する。
 レーゲンスブルクも然り。「ドナウの街レーゲンスブルク」のコンセプトは「西と 東をつなぐ橋」。チェコ、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニアなどといった東欧各 国のEU加盟を控えているこの時期、このコンセプトは魅力的と思う。  イースター休暇を利用して、アウグスブルクを訪ねた。友人の友人と会ったのだ が、アウグスブルクも候補地とあって、この文化首都の話題に。バイエルン州ではア ウグスブルクとレーゲンスブルク、バンベルク、三つ巴の争いとなる。彼女は「もち ろんアウグスブルクになってほしい」と言いつつも、最終的にはゲルリッツになるの ではと弱気。そういう自分も、レーゲンスブルクに決まってほしいと思いながら、例 えば世界遺産都市バンベルクなどに比べてもやはり地味であると、自信なし。果たし てどうなるか。

4月某日
 Ostersonntag(復活祭の日曜日)、モンクマイヤー夫妻と共に、レーゲンスブルク 近郊に住む妹さんの家族を訪ねる。イースターには家族が集まり、いつもより豪華な 朝食をとるのが慣わしなのだという。食卓に並んだのは、厚切りのハム、チーズ、甘 いものと塩気のあるものと二種類のパン、そして青や赤に塗られたイースター卵。食 べながら、隣りに座っていたおばあさんが、これらはすべて教会にて聖別したものだ と教えてくれた。
 小さい子がいるところでは、このあと家の中に隠されたイースター卵を探すことに なるのだが、大きな人ばかりということで、日のあるうちからビール。いっしょに来 ていたモンクマイヤー夫妻の代子であるベーラと自分とは、卵型のチョコレートが ぎっしりと詰まった籠を贈られたが、こちらの方はそれもアルコール入り。
 外は晴れ。日の光。庭には水仙やパンジーが咲き、丘の緑も濃くなってきた。


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